中国は2004年にユネスコの採択した「無形文化遺産保護条約」に正式に加盟することになった。その前後に中国文化部の指導で一連の活動がくり広がられた。2003年10月に文化部が貴州で中国民族民間文化保護プロジェクト活動会議を開き、第一回目の国家級試験的項目10項を発表した。2004年4月に文化部が雲南で中国民族伝統文化保護プロジェクト活動交流会を開き、第二回目30項の国家級試験的項目を発表した。その意図は民族民間文化保護の有効な方式を探り、民族伝統文化保護の資源建設、活動隊建設、管理モデル及び活動メカニズムなど面において探求行い、この活動から得た経験を全国範囲内で広げるためである(中国無形文化遺産ネットワーク)と示されている。試験的項目は総合項目と専門項目と二つに分けられ、中央(政府)と地方が枠を決め、管理活動を行う。その総合項目は、雲南省、浙江省、湖北省宣昌市、江蘇省蘇州市、福建省泉州市、湖南省湘西土家族苗族自治州の6地点である。専門項目は以下の34項がある:
北京市民間音楽・京西古幡楽 | 四川省民間歌舞・卡斯達温 |
天津市楊柳青木版年画 | 貴州省黎平県肇興侗族文化生態保護区 |
河北武強年画 | チベット自治区シガツエ県・迥巴藏戯 |
山西省地方戯曲・耍孩児劇種 | 陝西省西安鼓楽 |
内モンゴル自治区モンゴル族服装芸術 | 甘粛省慶陽市環県・道情皮影 |
遼寧省凌源皮影芸術 | 青海省同仁・熱貢芸術 |
吉林省満族口頭文学、伝統曲芸 | 寧夏回族自治区民間歌舞・回族踏脚 |
黒竜江省ホジェン族伝統魚猟文化 | 新疆ウイグル自治区ウイグルムカム |
上海市民間曲芸・鑼鼓書 | 民間芸術音響資料 |
安徽省民間歌舞・花鼓灯 | 民間音楽舞踊戯曲遺産目録 |
江西省地方戯曲・弋陽腔 | 少数民族言語(エヴェンキ族、ユーグ族等) |
山東省楊家埠木版年画 | 陝北小程村黄河原生態文化 |
河南省伝統寺文化(淮陽、浚県) | 耀州窑伝統工芸 |
広東民間工芸——雷州石狗 | 農業文化遺産文化(貴州従江、威寧) |
海南黎族伝統棉紡績工芸 | 老北京の商業習俗 |
広西壮族自治区紅水河流域銅鼓芸術 | プミ族伝統文化伝習グループ |
重慶市銅梁龍舞芸術 | 中国木板年画 |
それ以来、中国は3年間にわたる全国規模の無形文化遺産の調査プロジェクトを相次いで立ち上げ、無形文化遺産の分布、保存状況に関しての全面的な把握を行った。2006年に、各省・自治区・直轄市は合わせて1315項目の無形文化遺産を国家に推薦し、そのうち519項目が国家級遺産に選ばれた。さらに、2006年、中国は毎年6月の第二日曜日を「文化遺産の日」に指定し、各種様々な文化遺産の知識を普及する活動を始まった。現在、中国の半分以上の省(直轄市、自治区)が省レベルの無形文化遺産名簿を確立して、それらの保護に力を尽くしている。今までユネスコの「世界無形文化遺産」(人類の口承および無形遺産の傑作)のリストに登録されている無形文化遺産が4つある。2001年に中国初の登録された「崑曲」をはじめ、これに継いで2003年に伝統器楽「古琴」が、2005年には「ウイグル族のムカム」(詩歌、音楽、舞踏などを一体化させた芸術)と「蒙古族の長調」(息の長い発音と高音に特徴がある民謡)がそれぞれ登録された。
現在中国の無形文化遺産国家保護組織の構成は以下のとおり。これらの組織のもとで様々な活動がおこなわれている。:
- 中華人民共和国文化部
- 無形文化遺産保護活動部際聯席会制度
- 中国民族民間文化保護プロジェクト指導グループ
- 中国第三回目のユネスコ「人類の口承および無形遺産に関する傑作」に申請するための専門家審査委員会
- 中国芸術研究院国立無形文化遺産研究保護センター
- ユネスコ(国連教育科学文化機関)
- ユネスコ「人類の口承および無形遺産に関する傑作」審査委員会
- 国立無形文化遺産保護活動委員会
シュクル ラフマン (Shukur Rahman)
金沢大学文学部 博士研究員
金沢大学博士研究員として本プロジェクトのスタッフを務めるかたわら、現代ウイグル民族音楽などの研究を行っている。